トラツグミ

 虎鶫。鳥綱スズメ目ヒタキ科ツグミ亜科の鳥。日本を含む東アジアからオーストラリアにかけて広く分布しており、冬季は暖地へ渡るものがあります。全長約29センチ。

 実物をみるとトラの名前がついた理由が分かります。ツグミ属の中でも最も大柄で虎の縞模様が美しく、ほかの鳥が敬遠する暗い森を好み、冬もひっそりと生活してます。人が口笛を投げますと、トラツグミは応えます。人恋しい鳥なのに妖怪ヌエの鳴く声だと伝えられました。

 腹は白く、翼の裏は白と黒2本ずつの帯模様があり、飛ぶ時に目だちます。暗い森の中にすみ、各種の木の実、草の根などの植物質のほか、昆虫、ミミズなどの動物質もとります。

 日本では5〜7月に森林の中の樹上に巣をかけ、3〜5卵を産みます。夜または曇りの日に、ヒー、ヒョーというもの寂しい声でさえずり、この声が伝説上の化け物「ぬえ」の正体であるとされます。

 山林に生息して夜さみしい声で鳴くので、『古事記』上巻の八千矛神の長歌に「青山にヌエは鳴きぬ」という歌句があります。『平家物語』には、近衛天皇が夜になるとおびえられますので、源頼政が勅を奉じてぬえを退治した物語が記されています。夜中に黒雲が現れ、その中に怪物が見えたので頼政はこれを射落とし、従者の井の早太が刺し殺しました。怪物は、頭は猿、むくろは狸、尾は蛇、手足は虎の姿、鳴く声はヌエでした。これが源三位頼政のヌエ退治として今日まで伝えられています。


北軽井沢&浅間高原の野鳥